Clears 池田圭

「複数形のSを付けたのは、彼女が触れる壁の
向こうに誰かがいるような気がしたからだ」

【製作年】2005年
【時間】16分40秒
【監督】池田圭
【脚本】池田圭
【撮影】池田圭
【編集】池田圭
【音楽】長阪浩成
【出演】翁長誠、神農幸
【ロケ地】東京都新宿区
Clears

触れる事のできない透明が、私の心に色をつける。

 男が勘違いで入ったその部屋はギャラリーだった。しかしそのギャラリーには作品は一つもない。タイトルプレートのみがまだ残されている真っ白な壁が、もうすでに終わってしまった作品展を思わせた。唐突にオーナーの女は男にギャラリーの掃除を依頼する。男は壁に残されたタイトルから展示されていた写真を想像し「透明な写真展」と言った。今はもうない、そこに展示されていた写真は、いなくなってしまった女の恋人が撮ったものだった。女は記憶の中にだけ残った写真から自らとそして恋人との思い出を辿る。 手繰り寄せるように女が壁に手を触れ、男はその横顔にカメラを向けてシャッターをきった。透明という目には見えない不在の色が男が撮った写真と女の心の中に色濃く残る。



池田圭(いけだけい)

【監督プロフィール】1979年・長野県生まれ

19歳より独学で映像を学び、music clipなど様々な分野のプロモーション映像を制作する傍ら、映画製作団体Iori Apartmentでは脚本家・監督として映像制作の指揮をとる。原作・原案、撮影から編集までを監修および自身で手がける事により、作品全てに一貫性と独自の感覚を反映させる。

【この作品で伝えたかったこと】

 今ここで目に見える物事以外で、僕たちが激しくかき乱されたり強く揺さぶられたりする事は何だろうと考えた。それは「思い」だった。視覚としては全くゼロの思いが僕たちを情熱の赤や哀しみのブルーに染める。過ぎ去った過去の思い出や失われてしまった出来事に僕たちは強く揺さぶられる。でもそれは間違った事じゃない。思う事で、自分で色をつけてあげる。
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